モンベルヴィレッジ立山 建築プロジェクト
前例のない大規模木造建築へのチャレンジ
Prologue
山岳の魅力を体現した、大規模木造建築への挑戦
立山連邦のパノラマを背にした絶好のロケーションに建つ「モンベルヴィレッジ立山」。2015年9月のオープン以来、アウトドアを満喫するためのすべてがそろう大型複合店舗として、県内外から多くの人たちが訪れている人気のスポットだ。ブランドの世界観を体現するために、建物はすべて木造で建てられた。前例のない大規模木造建築を成功させた、施工管理者の思いに迫る。
Member
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INTERVIEW
現場所長
猪島 賢治
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現場主任
近堂 裕哉
Outline
前例のない、大規模木造建築の計画に驚愕
2014年春、施工管理者の猪島は上司と共に、大阪の登山用品メーカー、モンベルの本社を訪れた。受注が決まった「モンベルヴィレッジ立山」の着工前に、お客様に挨拶をするためだ。この設計図を初めて目にしたとき、猪島は心底驚いた。延床面積が 1,667平方メートルにも及ぶ大きな建物を、木造で建てる計画だったからだ。猪島にとって、木造の現場を担当するのは初めての経験だ。戸惑いと不安を抱えていたが、モンベル本社を訪問し、山を愛するブランドの思いに触れたことで、木造であることの必然性が理解できたという。「山岳の魅力を伝えたいというお客様の強い気持ちを知って、その期待に、全力で応えたいと思いました」と、猪島は振り返る。
お客様、設計事務所、協力会社、みんなの力で完成へ
工事を進めるにあたり、猪島は専門書を集めて、木の性質、材種ごとの特徴、法的な内装制限などを徹底的に勉強した。分からないことにぶつかるたび、設計事務所や協力業者に相談し、ひとつずつ乗り越えてきたという。お客様からは、「金具をできるだけ見せないように施工してほしい」などの要望があり、猪島は現場のすみずみまでそれを伝えた。「初めての木造の現場で難しいこともたくさんありましたが、一緒に現場を担当した部下や職人さんたちが、楽しみながら前向きに仕事に取り組んでくれたことが、とても励みになりました」と振り返る猪島。設計事務所や協力会社と連携し、みんなで一丸となって、お客様の思い描いているイメージを形にしようと努力した。人と人とのつながりの大切さを、猪島は改めて実感したという。
晴天の下、笑顔があふれたオープンの日
9ヶ月に及ぶ工期を経て、無事に迎えたオープンの日。晴れ渡る青空の下、完成したばかりの建物に、来場者の笑顔と歓声があふれた。猪島は、この日のことを今でもはっきり覚えているという。「来場者の方たちが、商品だけではなく、建物全体を見上げて『すごい!』と驚いていました。多くの方が喜んでくれる素晴らしい建物を建てることができて、本当にうれしかったです」と語る猪島。お客様からも「よくやった」と声をかけられ、笑顔で握手を交わした。「モンベルヴィレッジ立山」は、アウトドアの魅力が詰まったスポットとして評判を呼び、週末になると店の前の道に渋滞ができるほどの大盛況が続いた。
何年経っても、色褪せない魅力
オープンから6年が経った今も、「モンベルヴィレッジ立山」は立山観光に欠かせない定番スポットとして大きな魅力を放っている。この6年間、猪島の元には何度も「モンベルヴィレッジ立山」で使われている建材について、問い合わせがあった。この建物には、モンベルの象徴として全国の店舗で採用されている特徴的な石材や、設計士がバリで買い付けたタイルなど、珍しい建材がふんだんに使用されているからだ。「私自身、この仕事を通してこれまでに知らなかったことをたくさん知って、とてもいい勉強になりました。今でもメンテンナンスで足を運ぶたび、『いい建物だな』と実感します」と語る猪島。この魅力あふれる建物を手掛けた経験が、猪島にとって、大きな自信と誇りになっている。